三大激痛(後半)
前回のつづきです。
それでは専門である歯科での痛みはどうなのでしょうか。
わたくしは歯の痛みで苦しんだことはありませんが、前回挙げた三大痛のリストの一つに歯痛が入っているので、尿路結石と同じぐらい痛む事もあるのでしょう。
痛みと言っても、なかなか相手に痛みの程度を伝える事は難しいです。
『ズキズキ痛い・ジワーと痛い・夜も眠れないぐらい痛い・話せないぐらい痛い、等々』
しかし、痛みの質は分かっても、痛みの強さ(どれぐらい痛いのか)は分かりません。
そこで、試しに痛みを数値化してみます。
- 自分が今までに経験した中で一番痛かった出来事を【100】とします。
(僕の場合:尿管結石の痛みを100とします。) - 歯の治療でした麻酔は【3】
親知らずを抜いた後は【30】
転んで足を骨折した【60】
と複数の基準を設けます。 - 今日の治療での痛みを患者さんに数値化して頂きます。
ここで今日の数字が50であれば、かなり痛かったのかな?と想像が出来ます。かりに10であればそれほどの苦痛は無かったとも判断出来ます。
また、項目の中で歯科医自身が同じ痛みを経験をしたことがあれば、より患者さんの感じている痛みを理解出来る様になります。
この様に患者さんの痛みを知ることは歯科医にとって非常に重要な事柄になります。
少し専門的になりますが、日常診療をしていると度々歯の神経が残せるのかの判断を迫られることがあります。
歯の神経には大まかに分けるとA繊維とC繊維、2種類あります。
A繊維は神経が太く伝わる速度が早いので、刺激があると即座に痛みが出てくる一時的な痛みです。チックやズキンと痛いと表現されることが多いです。
C繊維は伝わる速度が遅く、刺激が伝わり暫くして痛みが現れ、その後も暫く痛みが持続します。ジーンと痛いなどと表現されます。(熱い物を口にいれて最初は大丈夫だったが暫くすると、痛たたた・・・という感じです)
ここでA繊維は神経の表面にありC繊維は神経の中心にあります。患者さんが訴えている痛みがC繊維のような痛み方であると、我々歯科医は『細菌感染が神経の中枢まで入り込んでいるので神経を取らなくてはならない可能性が高いかな?』と診断し、一過性の痛みであれば『残せるかな?』などと判断する材料の一つにします。
歯科に通う基準を痛みにしてしまうと、ご自身の大切な財産である神経を取らなくてはならなくなる事があります。
日々の歯ブラシと定期健診が大切です。
わたくしは日常、出来るだけ痛みの少ない治療を目指しています。
例えば
- 麻酔の前に表面麻酔を塗る(効果については賛否あります)
- 針を刺すときには粘膜を伸展させ針を差し込むのではなく粘膜を針に入れるイメージ(これにより全く痛みを感じない事も多々あります)
- 麻酔液の入れる速度を遅くする(早いと傷みの原因になります)
- 麻酔が十分効いてから治療を始める(当たり前の事ですが)
このように麻酔一つとっても色々な事を考慮しています。
完全に痛みを0にする事は難しい場合もありますが、細かい事を一つ一つ積み重ねて行く事が、患者さんの痛みを軽減する事になるのです。