歯の生涯健康を支える、歯科用顕微鏡治療と栄養指導の重要性
日本で最初の歯科用顕微鏡が発売されたのは2000年。
僕自身、2003年に地区の歯科医師会セミナーで歯科用顕微鏡の存在を知りました。
そこで初めて、根の中を見ながら治療している動画のプレゼンを見て、驚愕しました。『根の中が見えるんだ!』
そうなんです、根の中は通常見えないので手探りで治療していたのです。
この時、顕微鏡なしの治療なんて考えられないと思い、顕微鏡を使う研修を受け、2年後の2005年からクリニックに導人しました。現在、顕微鏡治療を始めて19年が経ちました。
顕微鏡を使うことで全ての治療の精度が上がり、予後も格段に良くなりました。
全てではありませんが、神経を取ると言われた歯を残すことや、抜歯宣告をされた歯の根の治療で骨が再生することも、日常診療でよくあります。これはひとえに顕微鏡を使っている恩恵です。
暗い部分に光が当たり、よく見える。小さく細い部分が拡大してよく見える。単純な事ですが、よく見えれば治療の精度は格段に上がります。
当クリニックでは、全ての治療を顕微鏡下でおこなっています。
最近では少し減りましたが、『本当に顕微鏡を使って治療していますか?』という問い合わせがあります。
このような問い合わせがあるという事は、顕微鏡があっても『どうやら使わずに治療しているのではないか?』と疑問を持つ患者さんがいらっしゃるということです。
顕微鏡を確認のために使う歯科医師もいます。感覚で削り、削った部分を顕微鏡で確認する。うまく削れていない場合は、また感覚で削る。これを「チェッキングビュー」と呼んでいます。
顕微鏡が全くない場合と比べると、はるかに精度は上がります。
しかし、顕微鏡を見ながら削る場合と比べると、その差は歴然。顕微鏡を使いながら治療をするべきです。こちらは「ワーキングビュー」と呼ばれています。
歯科の椅子(ユニット)には無影灯と呼ばれる、お口の中を照らすライトがついています。
このライトは顕微鏡を使わずに直接目で見るときに使うものです。全ての治療を顕微鏡で行っていれば使う必要がないばかりでなく、顕微鏡のアームや口腔外バキュームなどと干渉して邪魔にすらなります。
当クリニックでは無影灯はついていません。僕自身が治療に使う椅子はもちろん、衛生士がメンテナンスに使う椅子にもありません。この無影灯が無ければ全ての治療に顕微鏡を使っていると判断して間違いがないと思います。顕微鏡クリニック選びの参考にしてください。
また、顕微鏡を使い、治療の精度が格段に上がり、長期予後も非常に良いものになっていますが、年に数例は歯の根っこが割れてしまい、抜歯になるケースがあります。
これをゼロにするべく、できる限りの処置をしていますが、治療精度だけではどうにもならない事がわかりました。それはブラキシズムと呼ばれる、歯軋りや食いしばりです。
通常、噛み締める力は最大50〜60kgですが、睡眠時はその5〜6倍の力がかかるとの研究もあります。
毎日、毎晩300kg近い力が歯に加われば、被せ物が取れたり、歯や根が割れたりします。
これを防ぐために、歯軋り防止装置=ナイトガードを入れて寝ている方がいらっしゃいますが、これで歯軋りは防止できません。歯が割れたり、被せ物が外れたり壊れたりするのを防ぐことはできるかもしれませんが、歯軋りは防止できません。
この歯軋りや食いしばりの根本原因が、寝ている時の低血糖やコルチゾール不足によることも多いので、日頃の食事や栄養状態の改善が必要になります。
当クリニックでは、血液検査データと食事内容などを元に、栄養指導を行っています。
栄養状態は、歯軋りや食いしばりだけでなく、虫歯の発生、歯周病、歯茎や骨の再生や健康維持になくてはならないものです。
骨粗鬆症で顎の骨だけが良かったり、腸粘膜やお肌が悪いのにお口の中だけ良いこともありません。全身の健康はお口の健康と直結しています。
全ての治療に顕微鏡を使う事、そして栄養状態や生活習慣を見直す事、この2点が歯を生涯健康で使っていく上で重要だと思います。
このコラムを書いた先生:
東京都